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おでこをせまく

大きく分けると次の2つになります。

1,男性的な生え際

2,女性的な丸いおでこ

いずれにせよ、おでこを狭くは、とても慎重に行う必要があります。特にそのデザインと密度です。

デザインでよく見かけるのは、意味もなくギザギザにしたものですが、一直線はおかしいので、自然に見せたいという気持ちはわかります、しかしそういう生え際は本来なく、この時点で変だなと感じてしまいます(マルコと呼んでいる)。

Ashampoo_Snap_2016.02.28_14h27m03s_007_(写真)Ashampoo_Snap_2016.03.04_15h07m07s_021_(写真)

2においては、さらに、そのデザインの重要性は高まります。ただ、丸くしただけでは、先ほどのギザギザや一直線と同じで、異様な感じがしてしまいます。

Ashampoo_Snap_2016.02.28_14h27m38s_008_(写真)

前頭部にある筋肉の構成にしたがって、科学的・解剖学的根拠のもと、デザインされるべきです。また、使う株のタイプ別の分配もまた、デザインの1つとなります。最前列は、ただ単に1本毛を植えるのではなく(これは良く勘違いされて手術されていて、太い1本毛でも、女性の生え際には不自然です)、産毛に近い細い毛髪を選び、その奥では1本毛を中心とした普通の太さのもの、さらに奥では2本毛を中心にと分配してしていく必要があります。生え際に大きいサイズの株を用いて、移植株数わりにボリュームのある手術をみかけることはが多いですが、これは、言い換えると、ボリュームのわりに地肌がすけており、それ以前に見かけが極めて不自然です。これは可能な限り避けるべきことです。

(女性)Ashampoo_Snap_2016.03.05_14h22m46s_022_(男性)(前後当院写真)

実際ここまで用心しても、本来の女性の生え際を実現できるわけではないですが、その神のなせる域に一歩でも近づきたいという気持ちが、植毛をする医師には必要です。

ついで、重要となるのは、密度です。もちろん元と同じ密度が最も理想ですが、いくつか問題があります。その一番は、傷跡です。移植に必要な穴ですが、通常のスリットやマイクロホールでは、ダメージは大きく、本来「点」で治るべき傷が、あまりに高密度で植えると、単に生着率が低下するというだけでなく、周囲への影響が重なり合って「面」として治り、傷跡(リッジと呼んでいる)として見えてしまうことがあります。したがって、まず考えるべきは、最初の穴の大きさとそのエッジです。当院が使用しているものは、マイクロスリットまたはニードルですが、これはかなり小さくここに毛を入れることそのものが高度の技術と時間を必要とします。下手に行えば、生着不良の結果となることもあるため、どこでもすぐに手を出せる方法ではないので、当院の最大の売りともなっています。では、どこまでならいいのかは、個人差があるため一概には言えませんが、おでこの場合は、40~50株/平方センチメートル程度は安全なことが多く、逆にこれを下回ると、スカスカで、1回での満足は得にくいでしょう。

あえて産毛を植毛するとき

FUEのメリットに一つに、採取株を選択できるというのがあります。通常は仕上がりのボリュームを考えると、大きめのしっかりした毛のグラフトを選ぶことが多いのですが、女性の生え際の最前列の様な場合は、できるだけ産毛に近いものを選びます。単に一本毛というのではなく、襟足近くの軟毛を選ぶのです。ボリュームという点ではコスパは悪く、また生着率は若干低いような気もしますが、許容範囲内ではないかと思います。それよりも今まで(単に一本毛の硬毛を並べる)にない自然さが得られます。

ちなみに、移植は手植えやエアーインプランターでは、毛根が反転したり折れてしまうことが多く難しいため、まず針で移植予備孔をあけ、Choi式ニードルで静かに置いてくる感じです。現在このChoi式ニードルは日本における植毛ではマイノリティな存在ですが、とても優れたツールです。

移植孔はスリットかホールか

これも時折議論されることがありますが、一言で言えば一長一短がある、ということです。さらにChoi式ニードルも含めて、私自身も、手術毎にどれをどの程度使うか悩むこともあります。現状、80%はスリット、10%Choi式ニードル、10%ホールといったところです。
ホールの利点は、Choi式ニードルでもそうですが、スリットにおける前後の「余分な隙間」がないため、グラフトがぴっちり収まり出血が少なく、高密度に移植が可能ということです。しかし、まずホールはスリットに比べて皮膚へのダメージは大きく、あまりに高密度にすると、点のはずの傷が面となって治って行くこともあるため用心が必要です。そして、既存毛があるときには、そのすべてを避けてホールを作るのはとても難度が高く、手間がかかる。またChoi式では表皮の巻き込みを起こし易いという欠点もある。スリットはなにか高密度が最も可能なように思われがちですが、実際、スリットで、その前後の「余分な隙間」を繋がらないように高密度にすれば「段々畑」状態となることが多く、可能な限り「ハニカム」で行うと自ずと密度に限界がでる。また、マイクロスリットへの移植はやや熟練を必要とし、下手にやるとグラフトの損傷は大きいため、熟練の技術者は必須です。
20年ほど前は、薄毛の治療は、薬か手術かのような議論もありました。世間はなぜかAなのかBなのかと言う議論がでるのですが、完璧な方法というのはなかなか無く、多くはAとBとの良いところを使うことが最良ではないかと考えています。

もう一つのハイブリッド

切るFUSSと切らないFUEを組み合わせるハイブリッドi-SAFEを始めましたが、今日診察致しました患者様から、刈るスタンダードと刈らないアンシェーブンのハイブリッドはどうなのかと、ご質問いただきました。なるほど、自毛で隠せる範囲の刈り上げからとそれを超えるものはアンシェーブンでという考えは、これもまた合理的で効率のいい方法なんだなと思い、今後はこの方法(ハイブリッドアンシェーブンと呼びましょうか)をメニューに加えたいと思います。

一度の手術で移植できる本数(ハイブリッドi-SAFE)

私のHPでも、一度で行える手術の上限はおよそ4000株(10000本)と記載しているのですが、東洋人において、ある程度AGAが進行しているケースでは、これはなかなか難しく、採取出来ても、手術時間は長く、後頭部の密度感は低くなりがちです。
そこで、多くの方で、この4000株(10000本)以上を手術できる可能性として、一つの解決法は、切るFUSSと切らないFUEを併用するハイブリッド法です。各々で2000株なら、切って縫った傷のテンションも低く抑えることができ、ある程度は気にならない程度の傷跡にできることが多く、採取も効率良く、時間も短縮できるのではないかということです。いくらかの切る方法のデメリットに目をつぶれば、数や時間の恩恵があると考えるのです。
以前、FUSSからFUEへの移行期に、ここまでの数ではないですが、ハイブリッド法を行ったことが何度かあり、経過に問題が無いことは確認済みです。