寄らない傷跡を切り取って治す矛盾

頭部の傷跡の修正で来られる患者さんの多くは、傷跡の切除縫縮を1回以上受けている方が多いのですが、すべてのケースで、手術前と変わらないか、反って酷くなっている。 正確には、そういう患者さんがワラにもすがる思いで、そのワラとして植毛を考え来られるのですが、すでに皮下の脂肪層を含む組織は菲薄化していて、いわゆる毛根が生着できる空間が乏しい。 それだけでなく、表面からも、色が白く血流が少ないのが見える。 このような場合は、植毛で生着しないこともあります。(ただ、少しでも移植毛が生着した部分の周囲は、なんと多少皮下組織が「再生」してきて、次回の生着が期待できるようになることがある。) 何を言いたいかというと、1回の切除縫縮は、まあ仕方ないかもしれないが、それでも無理なら、再度の切除縫縮は考えず、植毛で目立たないようにすることを考えるべきです。頭皮は他の皮膚とは違い毛が生えてる部分ですので。 さらに、植毛クリニックでも、以前切って植毛してできた傷跡を、特別の縫合法(これはトリコフィティクであるが、これは、美容外科では、フェイスリフトの縫合としては、ずっと以前より普通に行われたものです)を使用すると、 更に植毛をする毛も採取出来て、傷もきれいになると謳われていたりしますが、 その前の傷が広いのは、すでに頭皮の「伸び」を超えて緊張(元位置に戻ろうとする力)が高いためですから、縫合法を工夫する程度では、結局、切除してさらにその緊張を高めてしまい、 もとの傷跡よりきれいになるとは考えられない。 このような、切るストリップテクニックでできた傷跡の修正では、再度切ることは行わず、FUEで採取した毛を移植するか、またはヘアータトゥーをするかです。

Ashampoo_Snap_2016.03.03_15h46m21s_014_ (写真) 某有名クリニックでの「最近!」の例 3本の傷跡があり、一番上の傷跡を修正するために 4回目のFUSSを行ったあとの傷跡。
株のトリミングは必要か

ちょっとマニアックな話題ですが、当院ではFUSSだけでなく、FUEの一つであるi-SAFEにおいても、全例、採取した株はすべて、マンティス顕微鏡下でチェックをしています。 その目的の多くは、表皮の大きさにあります。 25年ほど前、私が植毛を最初に学んだころは、株の表皮部分は限りなく小さく、毛球部分は大きめの「涙型」が標準でした。 しかし、これは、生着率があまりよくなく、現在では、表皮も一部残し、全体としてスリム(スキニー)な株を作ります。 ところが、FUEで採れた株は円柱状であり、i-SAFEでは世界で使われているマイクロパンチに比べてもそのサイズは7割以下という細さで毛根部分は最初からスキニーですが、それでも、やや表皮部分が大きすぎる気がします。 株の生命力(バイアビリティ)を考えると、あまり、いじりたくないのですが、とても小さいが存在する傷跡を、より小さくし、また移植密度を上げるためには、表皮部分は多少削った方がいいようです。 この作業もまた、手術の手間を多くはしますが、治癒過程での周辺への影響を減らすことができると言う恩恵があるため、当院ではルーティンとしています。(写真) S__7987202

最近ちょっとしたブーム—ハイブリッドアンシェーブン—

最初は患者様から、ご提案頂いた方法です。
もちろん当院だけのことですが、ちょっとしたブームとなっています。

内容は、目立たない程度はバリカンで刈って、そこから効率良く採取して、それ以外は残った部分全体より、目立つことのない刈らないアンシェーブンで採取しようというものです。

アンシェーブン単独は、目立つこともなく、株のクオリティを落とさない、とても優れた方法ではありますが、
如何せん、手間がかかりその分多少ですが(汗)費用も高くなるため、このハイブリッドアンシェーブンはまさにいいとこ取りの手法と言えるかもしれません。

特に、刈る部分を、襟足近くでツーブロック風のヘアースタイルをご提案することが多くあります。
実際、刈り上げた部分もほんの一週間ほどで、点の傷を隠すに十分な長さまでなるため、直後は見えてもこれで行かれることが多くなりました(襟足近くは生え際用の細い毛を採取しやすい)。

もちろん、後頭部中央を刈って、自分の長い毛で覆い隠す方法もあります(株のサイズは大きくでき、ボリュームを稼げる)。(写真)

おでこをせまく

大きく分けると次の2つになります。 1,男性的な生え際 2,女性的な丸いおでこ いずれにせよ、おでこを狭くは、とても慎重に行う必要があります。特にそのデザインと密度です。 デザインでよく見かけるのは、意味もなくギザギザにしたものですが、一直線はおかしいので、自然に見せたいという気持ちはわかります。 しかしそういう生え際は本来なく、この時点で変だなと感じてしまいます(マルコと呼んでいる)。

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(写真)
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(写真)

2においては、さらに、そのデザインの重要性は高まります。 ただ、丸くしただけでは、先ほどのギザギザや一直線と同じで、異様な感じがしてしまいます。

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(写真)

前頭部にある筋肉の構成にしたがって、科学的・解剖学的根拠のもと、デザインされるべきです。 また、使う株のタイプ別の分配もまた、デザインの1つとなります。 最前列は、ただ単に1本毛を植えるのではなく (これは良く勘違いされて手術されていて、太い1本毛でも、女性の生え際には不自然です)、 産毛に近い細い毛髪を選び、その奥では1本毛を中心とした普通の太さのもの、さらに奥では2本毛を中心にと分配してしていく必要があります。 生え際に大きいサイズの株を用いて、移植株数わりにボリュームのある手術をみかけることはが多いですが、これは、言い換えると、ボリュームのわりに地肌がすけており、それ以前に見かけが極めて不自然です。 これは可能な限り避けるべきことです。

(女性)
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(男性)(前後当院写真)

実際ここまで用心しても、本来の女性の生え際を実現できるわけではないですが、その神のなせる域に一歩でも近づきたいという気持ちが、植毛をする医師には必要です。 ついで、重要となるのは、密度です。もちろん元と同じ密度が最も理想ですが、いくつか問題があります。 その一番は、傷跡です。 移植に必要な穴ですが、通常のスリットやマイクロホールでは、ダメージは大きく、 本来「点」で治るべき傷が、あまりに高密度で植えると、単に生着率が低下するというだけでなく、 周囲への影響が重なり合って「面」として治り、傷跡(リッジと呼んでいる)として見えてしまうことがあります。 したがって、まず考えるべきは、最初の穴の大きさとそのエッジです。 当院が使用しているものは、マイクロスリットまたはニードルですが、これはかなり小さくここに毛を入れることそのものが高度の技術と時間を必要とします。 下手に行えば、生着不良の結果となることもあるため、どこでもすぐに手を出せる方法ではないので、当院の最大の売りともなっています。 では、どこまでならいいのかは、個人差があるため一概には言えませんが、おでこの場合は、40~50株/平方センチメートル程度は安全なことが多く、逆にこれを下回ると、スカスカで、1回での満足は得にくいでしょう。

あえて産毛を植毛するとき

FUEのメリットに一つに、採取株を選択できるというのがあります。 通常は仕上がりのボリュームを考えると、大きめのしっかりした毛のグラフトを選ぶことが多いのですが、女性の生え際の最前列の様な場合は、できるだけ産毛に近いものを選びます。 単に一本毛というのではなく、襟足近くの軟毛を選ぶのです。 ボリュームという点ではコスパは悪く、また生着率は若干低いような気もしますが、許容範囲内ではないかと思います。 それよりも今まで(単に一本毛の硬毛を並べる)にない自然さが得られます。 ちなみに、移植は手植えやエアーインプランターでは、毛根が反転したり折れてしまうことが多く難しいため、まず針で移植予備孔をあけ、Choi式ニードルで静かに置いてくる感じです。 現在このChoi式ニードルは日本における植毛ではマイノリティな存在ですが、とても優れたツールです。

移植孔はスリットかホールか

これも時折議論されることがありますが、一言で言えば一長一短がある、ということです。 さらにChoi式ニードルも含めて、私自身も、手術毎にどれをどの程度使うか悩むこともあります。現状、80%はスリット、10%Choi式ニードル、10%ホールといったところです。 ホールの利点は、Choi式ニードルでもそうですが、スリットにおける前後の「余分な隙間」がないため、グラフトがぴっちり収まり出血が少なく、高密度に移植が可能ということです。 しかし、まずホールはスリットに比べて皮膚へのダメージは大きく、あまりに高密度にすると、点のはずの傷が面となって治って行くこともあるため用心が必要です。 そして、既存毛があるときには、そのすべてを避けてホールを作るのはとても難度が高く、手間がかかる。またChoi式では表皮の巻き込みを起こし易いという欠点もある。 スリットはなにか高密度が最も可能なように思われがちですが、実際、スリットで、その前後の「余分な隙間」を繋がらないように高密度にすれば「段々畑」状態となることが多く、可能な限り「ハニカム」で行うと自ずと密度に限界がでる。 また、マイクロスリットへの移植はやや熟練を必要とし、下手にやるとグラフトの損傷は大きいため、熟練の技術者は必須です。 20年ほど前は、薄毛の治療は、薬か手術かのような議論もありました。 世間はなぜかAなのかBなのかと言う議論がでるのですが、完璧な方法というのはなかなか無く、多くはAとBとの良いところを使うことが最良ではないかと考えています。