ちょっとマニアックな話題ですが、当院ではFUSSだけでなく、FUEの一つであるi-SAFEにおいても、全例、採取した株はすべて、マンティス顕微鏡下でチェックをしています。 その目的の多くは、表皮の大きさにあります。 25年ほど前、私が植毛を最初に学んだころは、株の表皮部分は限りなく小さく、毛球部分は大きめの「涙型」が標準でした。 しかし、これは、生着率があまりよくなく、現在では、表皮も一部残し、全体としてスリム(スキニー)な株を作ります。 ところが、FUEで採れた株は円柱状であり、i-SAFEでは世界で使われているマイクロパンチに比べてもそのサイズは7割以下という細さで毛根部分は最初からスキニーですが、それでも、やや表皮部分が大きすぎる気がします。 株の生命力(バイアビリティ)を考えると、あまり、いじりたくないのですが、とても小さいが存在する傷跡を、より小さくし、また移植密度を上げるためには、表皮部分は多少削った方がいいようです。 この作業もまた、手術の手間を多くはしますが、治癒過程での周辺への影響を減らすことができると言う恩恵があるため、当院ではルーティンとしています。(写真) 
最初は患者様から、ご提案頂いた方法です。
もちろん当院だけのことですが、ちょっとしたブームとなっています。
内容は、目立たない程度はバリカンで刈って、そこから効率良く採取して、それ以外は残った部分全体より、目立つことのない刈らないアンシェーブンで採取しようというものです。
アンシェーブン単独は、目立つこともなく、株のクオリティを落とさない、とても優れた方法ではありますが、
如何せん、手間がかかりその分多少ですが(汗)費用も高くなるため、このハイブリッドアンシェーブンはまさにいいとこ取りの手法と言えるかもしれません。
特に、刈る部分を、襟足近くでツーブロック風のヘアースタイルをご提案することが多くあります。
実際、刈り上げた部分もほんの一週間ほどで、点の傷を隠すに十分な長さまでなるため、直後は見えてもこれで行かれることが多くなりました(襟足近くは生え際用の細い毛を採取しやすい)。
もちろん、後頭部中央を刈って、自分の長い毛で覆い隠す方法もあります(株のサイズは大きくでき、ボリュームを稼げる)。(写真)
大きく分けると次の2つになります。 1,男性的な生え際 2,女性的な丸いおでこ いずれにせよ、おでこを狭くは、とても慎重に行う必要があります。特にそのデザインと密度です。 デザインでよく見かけるのは、意味もなくギザギザにしたものですが、一直線はおかしいので、自然に見せたいという気持ちはわかります。 しかしそういう生え際は本来なく、この時点で変だなと感じてしまいます(マルコと呼んでいる)。




2においては、さらに、そのデザインの重要性は高まります。 ただ、丸くしただけでは、先ほどのギザギザや一直線と同じで、異様な感じがしてしまいます。


前頭部にある筋肉の構成にしたがって、科学的・解剖学的根拠のもと、デザインされるべきです。 また、使う株のタイプ別の分配もまた、デザインの1つとなります。 最前列は、ただ単に1本毛を植えるのではなく (これは良く勘違いされて手術されていて、太い1本毛でも、女性の生え際には不自然です)、 産毛に近い細い毛髪を選び、その奥では1本毛を中心とした普通の太さのもの、さらに奥では2本毛を中心にと分配してしていく必要があります。 生え際に大きいサイズの株を用いて、移植株数わりにボリュームのある手術をみかけることはが多いですが、これは、言い換えると、ボリュームのわりに地肌がすけており、それ以前に見かけが極めて不自然です。 これは可能な限り避けるべきことです。



実際ここまで用心しても、本来の女性の生え際を実現できるわけではないですが、その神のなせる域に一歩でも近づきたいという気持ちが、植毛をする医師には必要です。 ついで、重要となるのは、密度です。もちろん元と同じ密度が最も理想ですが、いくつか問題があります。 その一番は、傷跡です。 移植に必要な穴ですが、通常のスリットやマイクロホールでは、ダメージは大きく、 本来「点」で治るべき傷が、あまりに高密度で植えると、単に生着率が低下するというだけでなく、 周囲への影響が重なり合って「面」として治り、傷跡(リッジと呼んでいる)として見えてしまうことがあります。 したがって、まず考えるべきは、最初の穴の大きさとそのエッジです。 当院が使用しているものは、マイクロスリットまたはニードルですが、これはかなり小さくここに毛を入れることそのものが高度の技術と時間を必要とします。 下手に行えば、生着不良の結果となることもあるため、どこでもすぐに手を出せる方法ではないので、当院の最大の売りともなっています。 では、どこまでならいいのかは、個人差があるため一概には言えませんが、おでこの場合は、40~50株/平方センチメートル程度は安全なことが多く、逆にこれを下回ると、スカスカで、1回での満足は得にくいでしょう。
FUEのメリットに一つに、採取株を選択できるというのがあります。 通常は仕上がりのボリュームを考えると、大きめのしっかりした毛のグラフトを選ぶことが多いのですが、女性の生え際の最前列の様な場合は、できるだけ産毛に近いものを選びます。 単に一本毛というのではなく、襟足近くの軟毛を選ぶのです。 ボリュームという点ではコスパは悪く、また生着率は若干低いような気もしますが、許容範囲内ではないかと思います。 それよりも今まで(単に一本毛の硬毛を並べる)にない自然さが得られます。 ちなみに、移植は手植えやエアーインプランターでは、毛根が反転したり折れてしまうことが多く難しいため、まず針で移植予備孔をあけ、Choi式ニードルで静かに置いてくる感じです。 現在このChoi式ニードルは日本における植毛ではマイノリティな存在ですが、とても優れたツールです。
これも時折議論されることがありますが、一言で言えば一長一短がある、ということです。 さらにChoi式ニードルも含めて、私自身も、手術毎にどれをどの程度使うか悩むこともあります。現状、80%はスリット、10%Choi式ニードル、10%ホールといったところです。 ホールの利点は、Choi式ニードルでもそうですが、スリットにおける前後の「余分な隙間」がないため、グラフトがぴっちり収まり出血が少なく、高密度に移植が可能ということです。 しかし、まずホールはスリットに比べて皮膚へのダメージは大きく、あまりに高密度にすると、点のはずの傷が面となって治って行くこともあるため用心が必要です。 そして、既存毛があるときには、そのすべてを避けてホールを作るのはとても難度が高く、手間がかかる。またChoi式では表皮の巻き込みを起こし易いという欠点もある。 スリットはなにか高密度が最も可能なように思われがちですが、実際、スリットで、その前後の「余分な隙間」を繋がらないように高密度にすれば「段々畑」状態となることが多く、可能な限り「ハニカム」で行うと自ずと密度に限界がでる。 また、マイクロスリットへの移植はやや熟練を必要とし、下手にやるとグラフトの損傷は大きいため、熟練の技術者は必須です。 20年ほど前は、薄毛の治療は、薬か手術かのような議論もありました。 世間はなぜかAなのかBなのかと言う議論がでるのですが、完璧な方法というのはなかなか無く、多くはAとBとの良いところを使うことが最良ではないかと考えています。
切るFUSSと切らないFUEを組み合わせるハイブリッドi-SAFEを始めましたが、今日診察致しました患者様から、刈るスタンダードと刈らないアンシェーブンのハイブリッドはどうなのかと、ご質問いただきました。

なるほど、自毛で隠せる範囲の刈り上げからとそれを超えるものはアンシェーブンでという考えは、これもまた合理的で効率のいい方法なんだなと思い、今後はこの方法(ハイブリッドアンシェーブンと呼びましょうか)をメニューに加えたいと思います。
私のHPでも、一度で行える手術の上限はおよそ4000株(10000本)と記載しているのですが、 東洋人において、ある程度AGAが進行しているケースでは、これはなかなか難しく、採取出来ても、手術時間は長く、後頭部の密度感は低くなりがちです。 そこで、多くの方で、この4000株(10000本)以上を手術できる可能性として、一つの解決法は、切るFUSSと切らないFUEを併用するハイブリッド法です。 各々で2000株なら、切って縫った傷のテンションも低く抑えることができ、ある程度は気にならない程度の傷跡にできることが多く、採取も効率良く、時間も短縮できるのではないかということです。 いくらかの切る方法のデメリットに目をつぶれば、数や時間の恩恵があると考えるのです。 以前、FUSSからFUEへの移行期に、ここまでの数ではないですが、ハイブリッド法を行ったことが何度かあり、経過に問題が無いことは確認済みです。
あまり、意識していないせいか、十代でのAGAは無いように思われているのですが、大人になって受診される方の15%がすでに15歳前後で薄毛の発症を感じており、さらにわずかですが、十代前でも発症があるとの統計があります。 (この若年性のAGAとは別に、出生時に母胎の男性ホルモンの影響でAGAパターンをもつベビーがいます、出生後一年ほどで改善しますが、やはり、男性ホルモンの感受性が強い傾向にあり、その多くは将来AGAになるようです。) AGAの内科的治療の主流は現在、男性ホルモンの作用を一部抑制するタイプの治療であるため、このような十代の生殖器のみならず体幹の成長期には使用できません。 これに対して、脱毛を抑制するのではなく、成長を促進することで、薄毛を改善する代替法があります。その一つはミノキシジルです。さらに直接的に作用して副作用の少ない成長因子があります。 また、そこまではと考えられてきた植毛も、侵襲の少ない方法が確立してきたため選択肢になりえます。
フィナステリドもデュタステリドも、わずか数ヶ月の連用でもDNAダメージを持つ精子の確率が増加することが最近の研究で判っています。 そのようなことは喫煙などでも起こることであり、あまり深刻な問題となることはないのかもしれません。 それは実際受精して出産に至るのは正常な精子のことがほとんどであり、DNAダメージを持つ精子は大抵は受精できず、まれに受精しても流産を起こしてしまうからでしょう。 それでも出産にまで至れば異常を持ったまま生まれると考えられるのです。 また皮膚や精液を介しての吸収程度の濃度で胎児奇形や妊娠異常を起こすことは考えにくく、また実際起こしたという報告もありません。 さらに、授乳においても母乳への移行も問題となる濃度ではない(このようなことは喫煙でも同じようなことが言えます)。 とはいえ、子供を作る予定のあるときには、事前に服用を中止し、妊娠がわかってから服用を再開するときも、コンドームを3ヶ月目程度までは使用し、さらに他の者の手に触れないよう管理するぐらいの用心があった方が良いのかと思います。 (たとえば、不運にも他の原因で何らかの異常が起きたとき、このことが原因だったのではないかと、将来にわたって苛まれることにもなりかねない)万全な状態なんて難しいにしても、心の平安のためにも、用心に越したことはないということです。 薄毛の治療における5ARI(フィナステリドやデュタステリドなど)に対しても、妊娠出産などへの影響がないもので、ある程度は代替できうる成長因子を用いた方法もある訳ですから。
治療で大切なことは、効果の高さだけでなく、いかに副作用や合併症を少なくするかなのです。 しかし、現在における薬は、男性型脱毛症AGAにおいてはある程度の結果を出してはいますが、やはり副作用の問題は置き去りのままです。 副作用を考える必要のない手術でも材料となる自毛の数には限界があります。 脱毛の抑制 毛髪生育の活発化なら成長因子の投与で可能となってきましたが、脱毛の抑制となるとちょっと厄介です。 毛包にアポトーシスを起こさせ、休止期へと導くものの代表的メッセンジャーは成長因子TGFーβ1ですが、これは主として男性型脱毛症AGAで見られるものです。 これに対して慢性休止期脱毛症CTEや円形脱毛AAなどでは、神経ペプチドのサブスタンスPがメッセンジャーとなっているのかもしれません。 これらのことが事実なら、脱毛症の対策は、これらのメッセンジャーが受容体に結合しないようにすれば良いことになります。拮抗薬などでブロックできれば、病的に休止期に移行することを避けられると言うことです。 ただし、副作用等を考えると毛包の受容体を選択的にブロックしたいところですが、残念ながらこれが現時点では十分に出来ていません。 (AGAにおいてはフィナステリドがTGFーβ1が生成されにくくすることで、抑制が可能ではあるのですが、男性ホルモンの作用まで抑制してしまう) 毛包器官の再生医療 毛包器官の元となる細胞を抽出して培養し、それを移植(注入)し、脱毛に強い毛髪を作り出すというものです。 問題点は2点、一つは、新たに再生した毛髪も脱毛しないわけではない。元となる細胞の抽出を選択的に行っても脱毛原因はいくつもある。 もう一点は、再生毛が乱生してしまうのではないかということです。こちらは、おかしな方向のものは、抜いて植え替えることもできます。
















